イベルメクチンの効果・副作用・服用できない人
イベルメクチンの目次
イベルメクチンと新型コロナウイルス
近年、イベルメクチンの知名度が上がった理由は、新型コロナウイルスによるものです。
イベルメクチンが新型コロナウイルスの治療に有効であるというデータが発表されたためです。
治療薬が開発される以前に、既存の薬で新型コロナウイルスの治療を行うという研究が多くありましたが、中でもイベルメクチンはその筆頭とも言える存在でした。
アメリカの医師による試験結果には有効性が認められるといったようなデータもありますが、いまだそのエビデンスが確立されているわけではありません。
アメリカ食品医薬品局(FDA)やWHO(世界保健機関)では、新型コロナウイルスの治療にイベルメクチンを使用しないよう警告を促しています。
WHO(世界保健機関)
・The current evidence on the use of ivermectin to treat COVID-19 patients is inconclusive.
・Until more data is available, WHO recommends that the drug only be used within clinical trials.
(・新型コロナウイルス患者を治療するためにイベルメクチンの使用するという結論には至っていない)
(・より多くのデータが得られるまでは、WHOは臨床試験範囲内に留めることを推奨している)
引用:WHO advises that ivermectin only be used to treat COVID-19 within clinical trials
WHOでは新型コロナウイルスに対して決定的なデータがないため、臨床試験のみの使用を推奨しています。
日本でも新型コロナウイルスの治療薬として承認されておらず、適応外処方という形で医師の判断や臨床試験にのみ使用されています。
個人輸入でもイベルメクチンを購入することができますが、新型コロナウイルスに対して使用する場合、自己判断・自己責任での服用となります。
追記:2022年9月26日にイベルメクチンをコロナ治療薬として臨床試験を行っていた興和株式会社により、以下の内容と共に、第Ⅲ相臨床試験の終了を報告しています。
オミクロン株が主流と考えられる今回の対象患者においては、本剤およびプラセボともに投与開始4日前後で症状の軽症化が認められましたが、本剤の有効性を見出すことができませんでした。興和は引き続き、細部に渡り様々な角度から本試験結果のデータ解析を進め、本剤の可能性についてさらに確認してまいります。
引用:興和/新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「K-237」(イベルメクチン)の第Ⅲ相臨床試験結果に関するお知らせ
イベルメクチンの新型コロナウイルスに対する作用機序
新型コロナウイルスに対しては以下の3つの作用機序から効果が期待できるとされています。
細胞内侵入阻害
イベルメクチンは、ウイルスの侵入を妨げます。
新型コロナウイルスは、人間の細胞(AEC2受容体)と結合することで体内へ侵入します。
スパイクたんぱくというトゲのようなものと人間の細胞が結合することをイベルメクチンが阻害します。
その結果、ウイルス感染を防ぎます。
ウイルス蛋白核内移行阻害
次に、インポーチンα/βとの結合を阻害します。
細胞内にウイルスが侵入した場合、たんぱく質であるインポーチンα/βと結合します。
※インポーチンα/β:核内へたんぱく質を輸送する働きがある
たんぱく質を輸送する電車にウイルスが乗り込んでしまうというイメージです。
しかし、イベルメクチンによってウイルスとたんぱく質の結合を阻害し、ウイルスが核内へ移動することを防ぎます。
複製、増殖阻害
侵入したウイルスは、核内で複製・増殖します。
しかし、核内への輸送を遮ることでウイルスは、核内にたどり着くことができず、複製・増殖をすることができません。
結果的に新型コロナウイルスの感染を抑えることに繋がります。
このような作用機序により、イベルメクチンは新型コロナウイルスの治療に効果が期待できると考えられています。
現在も研究が行われている最中で、日本では新型コロナウイルスの治療にイベルメクチンは承認されていません。
新型コロナウイルス治療の臨床試験結果
新型コロナウイルスの治療における臨床試験は現在も世界各国で行われている最中です。
日本では第Ⅲ相検証試験を興和が行っています。
海外のイベルメクチンの有効性を示したデータは以下の通りです。
すべての研究 | |
---|---|
予防 | 83% (74-89%) |
早期治療 | 63% (52-71%) |
後期治療 | 39% (23-52%) |
患者数 | 132,948人 |
参考サイト
・Ivermectin for COVID-19
新型コロナウイルスに対するイベルメクチンの飲み方
新型コロナウイルスに対してイベルメクチンは、承認されていません。
そのため、正式な飲み方はありませんが、FLCCC(コロナ治療のプロトコル開発グループ)という機関が早期治療と予防の服用方法を発表しています。
詳しい飲み方に関しては、以下のページを確認してください。
臨床試験中の新型コロナウイルス治療
現在、日本の臨床試験中の新型コロナウイルスの治療に用いられている服用方法は以下の通りです。
軽症者が対象
200μg/kg、1回投与(単回経口投与)
軽症者が対象
0.3~0.4mg/kg、1日1回、3日間経口投与
イベルメクチンの効果・先発薬
イベルメクチンは主に、寄生虫の駆除に効果があります。
寄生虫の神経や筋細胞に存在している、クロライドチャンネルに結合することで細胞膜内の透過性を上昇させます。
その結果、寄生虫を麻痺させることで、死滅、駆虫ができます。
イベルメクチンを含む薬の先発薬はストロメクトールという商品名です。
2002年の12月から販売されており、日本で処方されているイベルメクチンは全てストロメクトールとなります。
イベルメクチンの適応症と推奨度
イベルメクチンの適応症は、腸管糞線虫症と疥癬です。
腸管糞線虫症
汚染された土壌から感染幼虫が侵入することが原因で起こる疾患。幼虫は血流やリンパ流によって体内を移動し、小腸の上部で成虫になる。
糞線虫症の臨床試験結果
日本では、糞線虫陽性患者50人を対象とした臨床試験が行われました。
条件は、イベルメクチン約200μg/kgを2週間間隔で2回投与した場合というものです。
その結果、投与から4週間後の糞便検査において、98.0%(49/50)の駆虫率でした。
糞線虫の治療においては、高い有効性が確認されています。
海外における糞線虫の臨床試験では、イベルメクチンとアルベンダゾール・チアベンダゾール3つによるオープン比較臨床試験が行われています。
駆虫率を見てみると、イベルメクチンの有効性が高いことが分かります。
イベルメクチン | 比較対照薬 | ||
---|---|---|---|
アルベンダゾール | 国際試験 | 79%(22/28) | 43%(10/23) |
WHO試験 | 83%(126/152) | 45%(67/149) | |
チアベンダゾール | 国際試験 | 67%(10/15) | 87%(13/15) |
米国試験 | 100%(14/14) | 94%(16/17) |
主な症状は、一過性の肺炎、乾いた咳、呼吸困難、喘息など。
また、発熱や腹痛、下痢といった症状も起こる。
糞線虫症に対するイベルメクチンの推奨度
イベルメクチンの有効性が確立しており,世界的に使用されている(A).
引用:JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015―腸管感染症―
※推奨度:A~C(Aが最も高い)
疥癬
ヒゼンダニが皮膚に寄生することで起こり、人から人へと感染する疾患。
皮膚の外側の角質層に寄生し、年間8~15万人の患者がいるとされている。
主な症状は皮膚に起こり、赤い発疹や、かゆみを伴う。
疥癬の臨床試験結果
疥癬の臨床試験は、疥癬患者55人を対象とした試験がイタリアで行われました。
イベルメクチン約200μg/kgを単回投与による有効性を検査したものです。
イベルメクチン | プラセボ | |
---|---|---|
治癒率 | 74% | 15% |
この結果から、疥癬ではイベルメクチンは有効とされています。
疥癬に対するイベルメクチンの推奨度
CQ:イベルメクチン内服は疥癬治療に有効か?
推薦文:疥癬治療においてイベルメクチンは有効である.
推奨度:A(行うよう強く勧められる)
引用:疥癬診療ガイドライン(第 3 版)| 日本皮膚科学会ガイドライン
※推奨度:A~D(Aが最も高い)
イベルメクチンの服用方法
イベルメクチンは空腹の状態で水で服用してください。
服用の注意点
イベルメクチンは、人間用だけでなく動物用もあります。
アメリカでは動物用を購入・服用してしまったことによる、相談や副作用の例も報告されています。
人間用も動物用も有効成分はイベルメクチンですが、動物用は人間への安全性が確立されていません。
そのため、購入や使用する際には必ず人間用のイベルメクチンを購入しましょう。
イベルメクチンの副作用
臨床試験や使用成績調査によるイベルメクチンの副作用の発現頻度は以下の通りです。
試験名 | 発現率 | 対象 |
---|---|---|
腸管糞線虫症 (臨床試験国内) |
2.0% | 50例中1 |
腸管糞線虫症 (臨床試験海外) |
11.0% | 109例中12 |
腸管糞線虫症 (使用成績調査) |
6.1% | 309例中19 |
疥癬 (使用成績調査) |
1.6% | 750例中12例 |
副作用の主な症状は、めまい、吐き気、下痢、腹痛などがあります。
その他の副作用は以下の通りです。
頻度不明 | 0.1~5%未満 | 0.1%未満 |
---|---|---|
そう痒の一過性の増悪 蕁麻疹 AI-P上昇 下痢 食欲不振 便秘 腹痛 めまい 傾眠 振戦 無力症・疲労 低血圧 気管支喘息の増悪 |
そう痒 発疹 肝機能異常 AST・GOT上昇 ALS・GPT上昇 総ビリルビン値上昇 γ-GTP上昇 BUN上昇 貧血 好酸球数増加 LDH上昇 |
悪心 嘔吐 白血球数減少 リンパ球数増加 単球数減少 血尿 |
重大な副作用
イベルメクチンには重大な副作用があります。
・中毒性表皮壊死融解症
全身の広範囲で赤みが起こり、やけどのような症状が起こります。
・皮膚粘膜眼症
口唇や口腔、眼や鼻などの粘膜にただれが起こります。
・肝機能障害、黄疸
AST・GOT上昇やALS・GPT上昇に伴い、肝機能障害や黄疸が起こります。
・意識障害
昏睡や意識レベルの低下が起こります。
意識障害は2021年10月12日に新たに重大な副作用に追加されています。
関連の症例は4件あり、そのうち1件は死亡となっています。
イベルメクチンを使用する際には、副作用だけでなく重大な副作用にも十分注意してください。
イベルメクチンを使用できない方
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方
・高齢者
安全が確立しておらず、一般的な高齢者には肝臓・腎臓・心機能の低下がみられるため。
・妊婦、産婦、授乳中の方
治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ使用可能。
妊娠中は安全が確立しておらず、動物実験では催奇形性が認められている。
・小児
体重が15kg未満への小児に対する安全が確立されていないため。
イベルメクチンの併用禁忌・注意薬
イベルメクチンの併用禁忌・注意薬は報告されていません。
常用している薬がある場合は、医師に相談の上使用してください。
イベルメクチンの豆知識
イベルメクチンは日本人の大村智さんが発見し、開発した治療薬です。
大村智さんはこのイベルメクチンの発見により、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞されています。
実は、大村智さんは静岡県伊東市内のゴルフ場から採取した土壌に、後々イベルメクチンとなるための物質を発見したそうです。
日本ではあまりなじみのないものですが、フィラリアの一種であるオンコセルカ症がナイジェリアで大流行した際にもイベルメクチンが治療薬として用いられました。
海外では、いまだに人間の駆虫薬としてイベルメクチンを摂取している地域もあります。
イベルメクチンの商品一覧
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商品名 | イベルメクチン | イベルメクチン(ArrowLab製) | ストロメクトール |
用量 | 12mg | 3mg | 3mg |
価格 | 4錠 1,920円~ |
4錠 4,850円~ |
4錠 5,900円~ |
購入 | 購入する | 購入する | 購入する |
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参考サイト
・疥癬診療ガイドライン
・寄生虫症薬物治療の手引き
・Why You Should Not Use Ivermectin to Treat or Prevent COVID-19
・WHO advises that ivermectin only be used to treat COVID-19 within clinical trials
・医療用医薬品 : ストロメクトール