抗生物質が効かない「スーパー淋菌」

抗生物質が効かない「スーパー淋菌」 STD(性感染症)

淋病などの性感染症の治療には抗生物質が使用されますが、これまで有効とされてきた抗生物質に耐性をもつ「スーパー淋菌」が発見され世界的な話題になっています。

「スーパー淋菌」はどんな特徴があるのでしょうか?

スーパー淋菌

2018年の初めにイギリスで初となる、抗生物質が効かない「スーパー淋菌」の感染者が確認されました。

経緯としては2017年に東南アジアで女性との性交渉をしたのが原因とみられており、1ヶ月後に症状が現れたため医療機関を受診したことでわかったという。

アジスロマイシンやセフトリアキソンなど一般的に淋病の第一選択として使用される薬での治療を開始しましたが、投与しても効果がなかったとされます。

その後エルタペネムという別の薬を投与したところ、回復したとのことです。

エルタペネムは腸の外科手術後の感染症を予防する抗生物質です。

イギリスの構成衛生局は驚きを示し、これ以上の感染が広がらないように努めるとの考えです。

日本での感染例

実はこの抗生物質が効かないスーパー淋菌は、初めて感染が確認されたのは日本でした。

2000年代後半に、京都市内の風俗店に勤務する女性の喉に咽頭淋病が感染します。

治療のため抗生物質のセフトリアキソンを投与したが、効かないことがわかりました。

二度目の投与で治療できたが、自然治癒か抗生物質なのか結果が分からなかったようです。

咽頭淋病は自然治癒する場合があるといわれています。

女性の喉から採取した淋菌を調べた結果、セフトリアキソンに対する強い耐性が発見され、そのニュースは全世界に衝撃を与えました。

そもそも淋病とは

淋病は淋菌という病原菌が原因で起こる性感染症の1つで、梅毒やクラミジアと並び感染者の多い一般的な性病です。

他の性感染症と同じく粘膜接触により、微細な傷から体内に入り込みます。

通常の性行為 オーラルセックス アナルセックス まれにディープキスでも感染することがあります。

症状が発生する部分は、外気に触れにくく高温多湿な場所を好む淋菌が生息しやすい、尿道、咽頭、肛門、膣内です。

男性の場合、排尿時の焼けるような痛み、尿道から黄色や緑色、白色の膿が出ることもあります。

女性の場合、症状が出にくい、もしくは全く出ない場合があり、初期症状に気が付きにくいようです。

現れる症状として、腹痛やオリモノの増加、排尿時の熱感があります。

淋病は不妊症や子宮外妊娠の原因となることがあり、粘膜の炎症は他の感染症(クラミジア・HIVなど)を併発する可能性が高くなるなるため、放っておいてはいけない病気です。

耐性菌の原因は

回復してきたからと、途中で治療薬の服用を止めたり、1日3錠を1錠だけ服用など決められた用量を正確に飲まないことをしていると体に生き残る菌が現れます。

もともと自然界には抗生物質の効かない細菌も存在し、体内には何百種類の細菌や微生物が存在していますが、それぞれ一定の量でけん制し合っている状態だと特に体に変調が起こることはありません。

その中に微量に抗生物質に耐性を持った細菌がいた場合、抗生物質で他の細菌が一斉に死滅すると、このバランスが崩れ、耐性を持った菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。

耐性菌は進化する

砂漠や極地で生きる生物など、過酷な環境で生きる為に耐性獲得という進化を選ぶのと同じように、自らの性質を変化して対応するようになります。

1929年にペニシリンという抗生物質が誕生してからは梅毒同様、不治の病ではなくなり一時的に発症例も激減したと言われています。

しかしこれまで淋病の治療に使用されてきた多くの抗生物質には、その都度淋菌が耐性を持つようになり、様々な抗生物質が開発されてきた歴史があります。

現在治療にはセフトリアキソンが注射薬として使用されていますが、もともと経口薬として使用されていたもので耐性菌が出てきたことにより、静脈注射や点滴注射薬に変更されたものです。

抗生物質の開発と耐性菌の進化はいたちごっこのような関係と言えます。

耐性菌が確認されると、これに対抗する抗生物質が生まれ、またその薬に対しての耐性菌が生まれる、の繰り返しです。

スーパー淋菌の発見されたのを受け、対応できる治療薬がこれから開発されていくことになり、早い段階での開発が求められると思います。

淋病は予防が肝心

現在スーパー淋菌の感染件数は世界的に増えています。

淋菌は空気感染することはなく、感染経路は性行為がほとんどとなり稀だといわれますが、いつ感染するかわかりません。

普段からの予防意識や特殊な環境での性的な接触に対して敏感になる必要があると言えます。

特に風俗で遊ぶ場合は、働いている女性のおよそ30%が感染していると言われているため、オーラルセックスでも感染の危険性は十分にあり「もらってもしょうがない」ぐらいの覚悟が必要です。

もう一つ大事なのは、自らが感染した後も他の人に感染させてはいけないことです。

スーパー淋菌に関わらず、感染症への心当たりや症状が現れた場合はすぐに医師に相談するか、検査薬などで確認するようにしてください。

治療には注射薬と経口薬を使用するのが最適ですので、決められた用法と使用する期間を守り確実に治療しましょう。

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参考サイト

抗生物質が効かない淋病が…! 「スーパー淋菌」で世界は19世紀に逆戻り?

どのように耐性化するのか

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